比較って、なんか嫌ですね。何かを比較して、どっちがよいとか、悪いとか決めるんですから。差別も比較から生まれてきますから。比較表現のない世界を考えてしまいます。
でも、いろんなものを比較して違いを認識するところから、よりよいものをめざすという努力も始まるのかもしれません。
などと、今回は哲学的に始まりましたが、ドイツ語文法に戻りましょう。比較表現について見ていきます。
比較級と最上級の形
形容詞や副詞の比較級や最上級の形を見てみましょう。
jung(若い)やalt(古い)やgroß(大きい)のように、a、o、uのような母音があるときは、比較級と最上級でたいていウムラウトします。
jung - jünger - jüngst
alt - älter -ältest
のように。
altの場合は、最上級では-stではなく、-estがついています。これは発音上の都合です。arbeitenが、duのところでarbeitestと、-stではなく-estがついていたのと同じですね。
groß - größer - größt
これもウムラウトします。また、最上級はgrößstではなく、größtと-tだけがついています。これも動詞で、heißenがduのときheißtと、-tだけがついていたのと同じですね。
klein以外は少し不規則なところもありますが、それほどでもなく、まあ、規則的な変化の範囲内です。
gut - besser - best
これは英語と似ていますからわかりやすいですね。
viel - mehr - meist
これも、英語のmoreやmostと似ています。
でも、gern(好んで)という副詞は英語に相当する語がありません。
gern - lieber - liebst
となります。
こういう不規則な形容詞はどうするか。もちろん、覚えるしかありません。gut - besser - bestなどと、ひたすらつぶやきましょう。
原級による比較
原級による比較は二つのものを比較して、同じだと評価するものです。英語では<as...as...>で表現しましたが、ドイツ語では<so...wie...>となります。
Er ist so groß wie ich. (彼は私と同じ背の高さだ。)
Er singt so gut wie Tina. (彼はティーナと同様に上手に歌う。)
形容詞をso...wieで挟みます。ここでのwieは「~のように」の意味です。「~のように、そのように」とsoで受けています。großは「背が高い」という形容詞です。彼は私のように、そのように背が高い。」というのが直訳です。
二つ目の文のgutはここでは「上手に」という意味の副詞です。singen(歌う)という動詞にかかっています。
否定のnichtが入って、<nicht so...wie...>となると、「~ほど~ではない」となります。
Er ist nicht so groß wie ich. (彼は私ほど大きくない。)
Er isst nicht so viel wie Thomas. (彼はトーマスほどたくさん食べない。)
ということは、最初の文は「私の方が彼より大きい」ことになりますし、二つ面の文は「トーマスの方が彼よりたくさん食べる」ことになります。
原級による比較の例文
- Taro ist so alt wie Thomas. (タローはトーマスと同い年だ。)
- Grete ist nicht so fleißig wie Max. (グレーテはマックスほど勤勉じゃない。)
- Ich koche nicht so gut wie Sabine. (私はザビーネほど料理が上手じゃない。)
- Peter liest so viel wie Grete. (ペーターはグレーテと同じくらいたくさん読書する。)
3番のgutは副詞です。gut kochenで「上手に料理する」。
4番のviel lesenは「たくさん読書する」。
比較級による比較
比較級+als
Er ist größer als ich.(彼は私より背が高い。)
Er isst mehr als du.(彼は君よりたくさん食べる。)
英語では、thanで「~より」を表していましたが、ドイツ語では、alsを使います。<größer als...>や<mehr als...>のように、「比較級+als」の形になります。
名詞を修飾する
比較級はまた、普通の形容詞と同じように名詞を修飾することもよくあります。
Das ist eine bessere Idee. (そちらの方がよりよい考えだ。)
Er hat einen größeren Wagen als ich.(彼は私より大きい車を持っている。)
名詞を修飾していくので、比較級にさらに形容詞の変化語尾がつきます。最初の文では、besserに-eがついてbessereに、次の文ではgrößerに-enがついてgrößerenとなっています。この点は、比較級であっても、普通の形容詞と同じです。
größerenを辞書で引いても出ていません。-enが形容詞の変化語尾で、-erが比較級として付いたものであることを見抜く必要があります。
比較級の例文
- Inge ist fleißiger als ich. (インゲは私より勤勉だ。)
- Markus liest mehr als ich. (マクルスは私よりたくさん本を読む。)
- Er spricht besser Deutsch als ich. (彼は私より上手にドイツ語を話す。)
- Die Donau ist viel länger als der Rhein. (ドナウ川はライン川よりずっと長い。)
- Was isst du lieber, Fleisch oder Fisch? (君は肉と魚のどっちが好き?)
- Der Turm ist höher als das Gebäude. (あの塔はあの建物よりも高い。)
- Haben Sie kleinere Schuhe? (もっと小さな靴はありますか?)
- Das ist mein älterer Bruder. (これは私の兄です。)
- Meine jüngere Schwester arbeitet bei einer Bank.(私の妹は銀行で働いています。)
4番:vielは「ずっと」で、比較級を強めます。
5番:lieberはgernの比較級。「より好んで」という意味です。
6番:höherはhochの比較級です。hoch - höher - höchstとなりますので注意。発音も、ホッホ、ヘーエア、ヘヒストです。ややこしいですね。
7番:kleinがkleinerという比較級になって、さらに-eという変化語尾がついています。
8番:mein älterer Bruderは「私の、より年上の兄弟」という意味で、兄のこと。兄と言うためにこんな長い語を使わねばなりません。
9番:同様に、meine jüngere Schwesterは「私の、より年下の姉妹」という意味で、妹のこと。
最上級による比較
am stenの形で
最上級は英語とは違って、ちょっと変わっています。
fleißig(勤勉な)という形容詞の最上級は、fleißigstです。でもこれをそのまま使うことはありません。am stenの形、つまりam fleißigstenにして使います。
Er ist am fleißigsten in der Klasse.(彼はクラスでもっとも勤勉だ。)
Er trinkt am meisten Bier. (彼がもっともたくさんビールを飲む。)
一つ目の文のam fleißigstenは、形容詞として動詞seinとともに使われ、述語になっています。
二つ目の文のam meistenは、vielの最上級meistを、am stenの形にしたものです。「もっともたくさん」という意味で、副詞として動詞trinkenにかかっていきます。
な、なんなんだ、この<am sten>は? って思いますよね。当然です。
am fleißigstenは、<an + das Fleißigste>から来ています。つまり、場所を表す前置詞anと、形容詞の中性名詞化したものが合わさってできています。ですから、意味は「もっとも勤勉なものところに(いる)」ということです。am meistenは、<an + das Meiste>で、「もっとも多いもののところで(飲む)」→l「もっとも多い地点で(飲む)」→「もっとも多い程度に(飲む)」ということです。
なんだかこじつけみたいですね。分解すればそうなんでしょうけど、いちいち分解していられません。だから、最上級は<am sten>の形で使うんだ、と単純に覚えておくことにしましょう。
名詞を修飾
最上級も普通の形容詞と同じように名詞を修飾することができます。その場合、普通の形容詞と同じように変化語尾がつきます。
Er ist der fleißigste Student in der Klasse. (彼はクラスでもっとも勤勉な学生だ。)
Dieser Student ist der fleißigste in der Klasse.(この学生はクラスでもっとも勤勉だ。)
最初の文のfleißigsteは、fleißigという形容詞の最上級fleißigstに、形容詞の変化語尾-eがついたものです。
二つ目の文では、<der fleißigste>の後ろに、Studentが省略されています。<der fleißigste Student>なのですが、省略しないと、
Dieser Student ist der fleißigste Student in der Klasse.
となって、Studentが繰り返されるまだるっこしい文になります。省略されているものが明らかな場合は名詞を省略します。
女子学生の場合は、
Diese Studentin ist die fleißigste in der Klasse.
となります。
なお、der fleißigste、die fleißigsteと定冠詞をつけています。最上なの人や物は一つだけなので特定のものとなります。それで定冠詞をつけるのです。
また、der Fleißigste、die Fleißigsteのように大文字で書かないのは、der fleißigsteやdie fleißigsteが形容詞の名詞化されたものではなく、後ろにくる名詞を省略したものだからです。
「~のうちで」
比較するものが、「クラスで」なら、in der Klasseですが、ほかにも表現の仕方があります。
Paul ist der lustigste von allen Studenten.(パウルはすべての学生のうちでもっとも愉快な学生だ。)
Unter allen Bergen ist der Fuji der schönste.(すべての山のうちで富士がもっとも美しい。)
Emma ist die faulste meiner Töchter.(エンマは私の娘たちのうちでもっとも怠惰だ。)
のように、von+3格、unter+3格を用いることもあります。また、最後の例は、2格を使っています。meiner Töchterが複数の2格で、前にあるdie faulsteにかかっていきます。
最上級の例文
- Felix singt am besten von uns.(フェリックスは私たちのうちでもっとも上手に歌う。)
- Wie heißt der höchste Berg in Deutschland?(ドイツでもっとも高い山はなんといいますか?)
- Was isst du am liebsten?(君は何が一番好き?)
- Ist das der kürzeste Weg zur Post?(これは郵便局へのもっとも近い道ですか?)
- Wie kommt man am schnellsten zum Bahnhof?(どうしたら駅にもっとも速く行けますか?)
- Dieser Garten ist im Frühling am schönsten.(この庭は春が一番美しい。)
- Tokyo ist die größte Stadt Japans.(東京は日本最大の都市です。)
- Von allen Tieren ist der Wal das größte.(すべての動物のうち、鯨がもっとも大きい。)
2番:ドイツでもっとも高いのは、die Zugspitzeです。標高2962メートルです。
3番:am liebstenのliebstは、gernの最上級です。
4番:kürzestは、kurzの最上級です。
5番:直訳すれば、「どのようにして人はもっとも速く駅に至るか」です。
6番:これは、ある庭を別の庭と比べているわけではなく、同じ庭を季節で比べています。
7番:Japansと2格を使っています。もちろん、in Japanとすることもできます。2格だと、「日本の最大の都市」、in Japanを使うと「日本で最大の都市」となります。
8番:das größteの後ろに省略されているのは、Tier(動物)です。鯨(der Wal)はヴァールと発音します。
まとめ
変化表はつぶやいて覚えましょう。英語と違ってmoreとかmostとかをつける形容詞がなく、みんな-erや-stをつければいいので助かります。
使い方ですが、原級と比較級については、まあ、英語とだいたい同じですね。でも、最上級はちょっと(だいぶ?)ややこしいので気をつけましょう。