そうなのです。いつの間にか導入されていたのです。ちっとも気づきませんでした。
エスツェットには小文字しかなかった
エスツェットには長らく、大文字がありませんでした。エスツェットで始まる単語がなかったので使う必要性がほとんどなかったのです。表題などで、デザイン性の面からすべて大文字にする必要がある場合も、STRASSE(Straße)のように、ßは、SSで代用されていました。
ただその場合、たとえばMASSEがMasse(大量)なのか、Maße(寸法:Maßの複数)なのかが区別できません。固有名詞でも、WEISSさんは、Weißさんなのか、Weissさんなのかがわかりません。
大文字の導入
そういう状況でしたが、2017年にエスツェットの大文字として、「ẞ」が正書法で定められました。大文字が
ẞ
で、小文字が
ß
です。
ということで、Weißさんは、大文字で、
WEIẞ
と書けるようになったのです。
STRASSEは、
STRAẞE
となります。
でもなんだか……パッとしないような……。
フォントがまだ対応していないんでしょうか。
もっとも、使わなければならないというわけではありません。
正書法では、
大文字はSSと並んで、ẞを使うことができるとなっていますので、これまでどおり、STRASSEとつづってもまったくかまいません。
パソコンではどう打つか
エスツェットの大文字は、まだドイツ語キーボードには取り入れられていません。大文字にしようとして、
[Shift] + [ß]
と打っても、「?」が出るだけです。
でも、大文字はすでに2008年からUnicodeに取り入れられています。それでWordでは入力できます。どうするかというと、日本語入力オフ、あるいは半角入力で、
「1e9e」を入力してから、[Alt] + [X]
を打つのです。
ひょっとしたらと思って試してみると、スマホでも打てるようになっていました。大文字を打てるように[⇧]をクリックしてから、「S」を長押しすると、大文字のエスツェットが打てるのです。知らないうちに、変化はひたひたとやってきているようです。
さて、このエスツェットの大文字、定着するのでしょうか。
まあ、Unicodeに入った以上、消えていくことはないでしょうが、使う人は少なそうな気もします。
それでも、ドイツ語のアルファベットを説明する際、これまでのように「エスツェットには小文字しかない」と言えなくなったことだけは確かです。