形容詞が名詞を修飾するとき、その形容詞には語尾がくっつきます。語尾は1格から4格までで形が変化します。これを形容詞の格変化と言います。
形容詞の格変化はややこしいですが、まずはどんなふうな仕組みになっているのかを理解しましょう。
形容詞の用法
形容詞の用法は3つあります。
- Peter ist fleißig. (ペーターはまじめです。)
- Peter lernt fleißig Deutsch. (ペーターはまじめにドイツ語を学びます。)
- Peter ist ein fleißiger Student. (ペーターはまじめな学生です。)
最初の文では、「まじめな」という意味の形容詞<fleißig>はseinとともに使われて、文全体の述語になっています。seinのほかにwerdenとも一緒に使えます。
- Peter wird fleißig.(ペーターはまじめになります。)
二つ目の文では、fleißigは副詞として使われていて、「まじめに」という意味になっています。こんなふうに、ドイツ語の形容詞はそのままで副詞としても使うことができます。英語のように、-lyをつけたりして副詞にする必要はありません。
辞書で特に「副詞」とされていなくても副詞として使えるのです。便利ですね。
三つ目の文では、fleißigはStudentという名詞を修飾しています。このように名詞にかかっていく場合だけ、<-er>のように形容詞に語尾がくっつきます。
これが面倒なのです。本当に。
形容詞の格変化
名詞を修飾する形容詞の前がどうなっているかに応じて、3つのパターンがあります。何と3つもですよ。
- 形容詞の前に定冠詞[類]がある場合
- 形容詞の前に不定冠詞[類]がある場合
- 形容詞の前に何もない場合
定冠詞はderです。定冠詞類って何か覚えているでしょうか。そう、dieserのように定冠詞と同じ変化をするものをいいましたね。
不定冠詞はeinでした。不定冠詞類はmein、deinなどの所有冠詞、そして否定冠詞keinのことをいいました。これらはみんな不定冠詞と同じ変化をします。
復習したところで、1番から見ていきましょう。
1.形容詞の前に定冠詞[類]がある場合――弱い変化
形容詞の前に定冠詞[類]があるとは、
- der neue Computer(その新しいコンピュータは)
- dieser neue Computer(この新しいコンピュータは)
のような形です。「定冠詞[類]+形容詞+名詞」の順に並んでいます。そして、neuという形容詞に-eという語尾がついています。
まずは怖れることなく、変化を見てみましょう。
形容詞の語尾だけを見ると、-eと-enの2種類だけです。たいした変化はしていません。
男性名詞の場合は、-e、-en、-en、-en、女性名詞と中性名詞の場合は、-e、-en、-en、-e、複数の場合はみんな-enとなります。(延々とエンとなります、とだじゃれを言いたくなります。)
例によって、1格と4格が違うのは男性名詞の場合だけです。
エ、エン、エン、エン
エ、エン、エン、エ
エ、エン、エン、エ
エン、エン、エン、エン
と何回かつぶやけばすぐに覚えられます。おぼえなくても、はっしとにらんでおけば大丈夫でしょうか。僕はつぶやいておぼえましたけれど。
2.形容詞の前に不定冠詞[類]がある場合――中間的な変化
形容詞の前に不定冠詞や不定冠詞類がある場合というのは、
- ein neuer Computer(一台の新しいコンピュータ)
- mein neuer Computer(私の新しいコンピュータ)
のように、「不定冠詞[類]+形容詞+名詞」の順で並んだ場合です。neuという形容詞に-erという語尾がついています。
この場合の形容詞の変化は、定冠詞[類]が来た場合とあまり変わりません。
複数のところだけmeinを使っているのは、複数名詞にeinがつくことはないからです。
さて、定冠詞[類]が来たときと違っているのは、男性の1格、中性の1格、中性の4格の3カ所だけです。
そこでは不定冠詞がいずれもeinとなっています。einだけでは何格かよくわかりません。
定冠詞がある場合は、der neue Computerと、derによって男性の1格であることがすぐにわかります。でもeinだけだとよくわかりません。それで、neuerと形容詞の方で-erをつけて、男性の1格であることを明示しているのです。
中性名詞の場合も同じです。das neue Autoならdasではっきりと中性の1格か4格であることがわかります。それで形容詞は簡単な-eだけがついています。ところが、einだけだと性も格もよくわかりません。それで、neuesと-esをつけています。これなら、中性の1格か4格だとすぐにわかります。
ということで、不定冠詞が形容詞の前に来る場合は、3カ所だけ気をつければいいことになります。
3.形容詞の前に何もない場合――強い変化
これは
- guter Wein(よいワイン)
のように、形容詞の前に冠詞や冠詞類などが何もなくて、「形容詞+名詞」という形になっている場合のことです。
このときの形容詞の語尾は次のようになります。
-er、-en、-em、-en
と語尾がついています。定冠詞のder、des、dem、denに似ていますね。
定冠詞や不定冠詞がないと、性や格を明示するものがなくなってしまいます。それで形容詞自体の語尾によって性や格を示しています。
でも、男性名詞の2格だけは-enとなっていて、定冠詞のdesとは違っています。
- guten Kaffees(よいコーヒーの)
これは、Kaffeesの-sで2格であることがすぐにわかるからです。形容詞の方は大して変化しなくてもいいのです。それに、gutes Kaffeesと言うと、sがくどくなって発音もしにくくなります。
中性の2格が、
- guten Biers(よいビールの)
と-enになっているのも同じ事情です。
全体として定冠詞derや定冠詞類dieserの変化と似ていますから、そんなにたいしたことはないでしょう。僕は、
-er、-en、-em、-enなどと闇雲に覚えましたが、今考えてみると、そんなことをする必要もなさそうです。
練習問題
形容詞の語尾を補ってみましょう。
- Ich möchte einen schwarz Anzug (m).
黒いスーツがほしいのですが。 - Er ist ein lustig Junge.
彼はおもしろい男の子だ。 - Ich trinke grün Tee (m).
私は緑茶を飲みます。 - Sie hat braun Haare (pl) und grau Augen (pl).
彼女は髪は茶色で、灰色の目をしている。 - Er fährt mit seinem blau Wagen (m) ins Büro.
彼は青い車に乗って会社に行く。 - Bei schön Wetter (n) machen wir einen Ausflug.
天気がよければ、私たちはハイキングをします。 - Kann ich dieses rot Kleid (n) anprobieren?
この赤いドレスを試着してもいいですか? - Ich habe neu Schuhe (pl) gekauft.
私は新しい靴を買いました。
まとめ
また表が一杯出てきて、形容詞の格変化に呆然としているかもしれません。でも、根本を理解しましょう。要するに、文中で性や格がわかるようにしているだけのことです。
3番目の形容詞の前に何もない場合の変化が一番ややこしかったですが、そもそも名詞に冠詞や不定冠詞がつかないのは、名詞が液体などの数えられない名詞の場合だけですので、そんなに出てきません。(複数名詞は別です。)ということは、形容詞の変化語尾はだいたい、-enか-eだけとなります。簡単ですね。
ドイツ語を読む場合は、名詞の前に置かれた形容詞に-enがついてたら、ははあ~ん、これは形容詞の語尾だな、と思って、それを取って辞書を引けばいいのです。
語尾の正確さが求められるのは、話す場合、書く場合です。でも、「このおいしいワインはどこで買ったの?」なんて普通言いませんよね。言うとしたら、「このワインおいしいね。どこで買ったの?」でしょう。つまり、形容詞を付加語的に使う場合はあまりないのです。
ただし、あなたがドイ語で小説を書こうとする場合は別です。「その黒い、美しい目は……」なんて書くときは、
- Die schwarzen, schönen Augen...
と形容詞を連ねることも必要です。そのさい語尾変化を間違えたらだいなしです。
練習問題解答
- Ich möchte einen schwarzen Anzug.
- Er ist ein lustiger Junge.
- Ich trinke grünen Tee.
- Sie hat braune Haare und graue Augen.
- Er fährt mit seinem blauen Wagen ins Büro.
- Bei schönem Wetter machen wir einen Ausflug.
- Kann ich dieses rote Kleid anprobieren?
- Ich habe neue Schuhe gekauft.
1番:Anzugは男性名詞の4格。
2番:Jungeはseinの後ろにあるので、主語ではないですが1格です。
3番:Teeは男性名詞の4格。
4番:HaareもAugenも複数名詞の4格。
5番:mitは3格支配の前置詞なので、Wagenは3格。seinは不定冠詞類です。
6番:beiが3格支配の前置詞なので、Wetterは3格。冠詞はついていません。天気は一つ二つと数えられませんから。
7番:Kleidは4格。
8番:靴は、Schuheと複数で使います。ここでは4格です。単数はder Schuhです。片っぽだけですね。