ドイツ語のrは、英語のrとはまったく違ったしかたで発音します。喉の奥にある口蓋垂、つまり、口の奥でぶらりと垂れ下がった喉ひこをぶるぶるふるわせて音を出します。
なかなか難しいので、こっちは日本語のルで通してもかまいません。むしろ、l(エル)の方をしっかり、舌の先を上の歯茎の裏に押しつけて発音することで違いを出すようにしましょう。
でも、やはり本格的にrの音を出せるようになりたいと思う人がいるかもしれません。そのためには1ヶ月練習を続けてもかまわないという奇特な人がいるかもしれません。
そういう人たちのために、練習の仕方を述べます。
rの発音を聞いてみる
rの発音は、口をあけて、水なしでうがいをするときのように、喉の奥からルルルルルと音を出すのだとよく言います。でも、ピンとこないかもしれません。まず、どんな音なのかを聞いてみましょう。YouTubeです。
すごいですよね。気持ちいいほどルルルルルって響いています。でも人によってその強度はさまざまです。すさまじく強調する人もいれば、軽く小さくルルルルルと言っている人もいます。Rだけを発音してと言われると強く発音しても、実際の日常会話ではあっさりとしか発音しないと言っている人もいます。だって、いちいちしっかり発音するのはしんどいですものね。発音の手抜き(口抜き?)の原則です。
いずれにせよ、水なしでうがいをするように喉の奥から音を出す、というのがどういうことか理解できたと思います。
練習をする
では、練習をしてみましょう。まず、風呂に入って湯船につかります。別に風呂に入らなくてもいいのですが、変な音を出すと家族から怪しまれますから、風呂が最適なのです。
湯船につかったら、自分の足先に目を向け、水面のところを見ながら、つまり、顔をやや斜め下に向けて、大きな口を開け、アアアアアと音を出してみます。そのさい、うがいをするときのように、喉の奥ががらがら鳴るようにしてみてください。ガガガガガでもかまいません。
これをしばらく風呂に入るたびに続けましょう。
なんだか喉ひこがブルブルと震えているような気がしたら、大きな口を開けて、ハァーと言ってみましょう。ブルブルしている感じがしますか?
風呂から上がったら、洗面台の鏡の前で、大きな口を開けてやはり、喉の奥からハァーと言ってみましょう。鏡を見るので、風呂の中でのときより、顔がまっすぐ前を向くことになります。ちょっと難しいかもしれません。ハァーっと言い続けてみます。
そのときの舌の位置を確認しましょう。スキーのジャンプ台のように、舌先が下について、奥の方にむかってスロープを描いてせり上がっているのが見えると思います。舌によって喉の奥の穴が狭められ、喉ひこも半分くらいしか見えないかもしれません。
それで、ハァーっと音を出してみると、喉の奥が狭いので、息が出にくく、喉ひこがぶるぶるふるえることになるのです。喉ひこが、哀れにも息に翻弄されているのが見えたでしょうか。
そのときの音がrの音です。できましたね。
できたら、今度はルルルルルと言ってみましょう。口が狭まりますが、同じように喉の奥からルルルルルと息を出します。そう、それでOKです。
うまくいかない人は、とにかく風呂に入って、一ヶ月くらい、口を大きく開けてアアアアアというのを練習しましょう。うがいをするつもりでですよ。水がなくても唾は少しあるので、うがいのようになります。
単語を発音してみる
ルルルが出るようになったら、単語を発音してみます。ビデオにあった単語です。まずは語頭にrがあるものです。あまりカタカナを見ずに、最初はビデオの通りに発音してみましょう。
続いて、rが2番目に出てくる場合です。
ビデオを見ていると、人によって発音がさまざまであることがわかります。
rが2番目以降にある場合はどうしたらいいかって? その場合はあまり強調してルと発音することはないでしょう。母音化されることも多いので気にする必要はありません。まずはこれだけ練習しておきましょう。
まとめ
いやあ、ビデオを見ているとおもしろいですね。思わず真似をしたくなります。気軽にやってみましょう。
発音にはこだわりたくなりますが、あまりそれにとらわれる必要はありません。そもそも大人になってからは、一生練習し続けたからって、発音は完璧にはなりませんん。それにrの発音ができるようになっても、単語やいろんな表現、語の配置規則である文法を知らなければ何にもなりません。
一つ一つの発音よりは、とにかく話してみることの方が大切です。めんどうなら、日本語のラリルレロでいいのです。
最近読んだ、中川浩一氏の『総理通訳の外国語勉強法』(講談社現代新書)から、いくつか引用しておきます。
「発音は、文字通り音を発することが何より重要です。きれいな発音は後から付いてきます。」(53頁)
「私は、語学において、発音が重要でないとまで言うつもりはありませんが、(……)まずは四の五の言わずに音を出すことが大切だと思います。」(53頁)
「英語で言えば、アップルの「ア」は発音記号でǽですが、最初は日本語のカタカナの発音で「ア」と堂々と言ってもいいと思います。(……)え、外国人に通じなかったらどうするって?そういう経験をしたら、その単語の正しい発音は絶対忘れないでしょう。」(54頁)
総理大臣の通訳まで務めた人がこう言っているのですから、語学教師になる人は別として、それ以外の人は、発音にこだわりすぎずに、どんどん先に進みましょう。