ドイツ語の子音の発音を学びましょう。いっぱいあるので、面倒ですが、ざっと一通り目を通しておきましょう。
子音の発音
注意すべき子音の発音をアルファベット順に見ていきます。ドイツ語を学びながら、どう発音するんだっけ、と疑問に思ったらふり返りましょう。
-b:語末・音節末では、プ
ブとプは口の形は同じです。声帯を使うか使わないかの違いだけです。声帯を使えばブ、声帯を使わなければプになります。声帯を使った音を有声音、使わない音を無声音と呼びます。
ch(1):a, o, u, auの後は、ハ、オ、ウ、フ
ach
chには2種類の発音があります。最初のものは、ハが基本となります。
これらの単語はみんな、chの前に母音aがあって、ach(アッハ)となっています。このときは基本的にハの音になります。Dachはダッハと発音されます。
machenとLachenは、chの後に-enが来ているので、それぞれマッヘン、ラッヘンとなっていますが、mach-やLach-は、マッハ、ラッハと発音します。
音楽家Bachはバッハですよね。あれです。また、音速を超えたときマッハ2とか言ったりしますが、あのマッハはMachという人の名前からきています。
achの発音には注意が必要です。たとえば、Ach(ああ)は驚き、嘆きを表現する感動詞で、アッハと発音します。ただし、アッ・ハと二つに区切らないようにしましょう。chの後にはaという母音がないので、ハになりません。アッと言って、後のハは言ったつもりになっておきましょう。それに、アッ・ハと分けて言うと、「ああ、なんてこった」という嘆きになりませんよね。もっと気分を出して、喉の奥から息を強く出す感じです。最初は大きく口を開けてアと言いますが、アッハと発音し終わった後も、口は閉じずにアの形のままにしておきます。
と、こう言葉で説明するとやたらややこしくなります。YouTubeで発音を聞いてみましょう。そんなに難しくありませんよ。
このビデオの後半です。上の3つの単語の他にSachen(ザッヘン:物)も出てきます。
och
次は、och(オッホ)です。
uch
次は、uch(ウッフ)です。
auch
最後は、auch(アウフ)です。
ch(2):a, o, u, au以外はヒ
chの前にa, o, u, auが来ていない場合は、みんなヒと発音します。
先ほどのビデオの前半部分に例がたくさん出てきました。他にも、Michael(ミヒァエル:人名), Küche(キュッヒェ:台所), Kirche(キルヒェ:教会), manche(マンヒェ:多くの人々)などがありました。
これはただヒと言えばいいので、上の発音より簡単ですね。
chs:クス
chにsがつくと、クスとなります。
-d:語末・音節末では、ト
dもbと同じです。普通はドで、Dankeはダンケ、denkenはデンケンです。でも単語の末尾では、トと無声音になります。
ds:ツ
dt:ト
後で出てきますが、st-はシュトと発音します。それでStadtはシュタットです。
Schmidtはドイツ人らしい響きの名前ですね。英語ではSmithです。日本語だと、シュミットと前にアクセントを置きたくなりますが、シュミットと後にアクセントがありますので気をつけましょう。
Schmidtを見ると、長い単語なのに母音がiと一つしかありませんね。アクセントは母音にだけ置かれるのでシュミット以外の発音はできません。Schumidtなら、シュミットとなる可能性もありますが、そうはなっていません。
-er:語末では、アー
erは普通はエルとローマ字読みしますが、語末にあるときは、アーと母音の発音になります。これを母音化と言います。下の方にある、-rの発音も参照してください。-rのときと違って、こっちはアーとちょっとのばします。
英語のfatherとかteacherと同じです。
-ern:語末では、アーン
-erをアーと読むので、それに-n(ン)をくっつける感じです。
-g:語末・音節末では、ク
gは普通はグで、Gurke(グルケ:きゅうり)、Gast(ガスト:客)のようにローマ字読みです。ただし、-b, -dと同じように、語末・音節末では無声音となり、クとなります。
英語の影響があって間違えやすいので気をつけましょう。
母音+h:発音しない
hは語頭にあると、haben(ハーベン:持っている)やHand(ハント:手)のように、普通にハと発音するのですが、母音+hのときは、hは発音しません。そしてhの前にある母音をのばします。hは前にある母音をのばす記号だと考えましょう。
-ig:語末では、イッヒ
単語の末尾では、ich(イッヒ)と同じ発音になります。
j:ヤ、ユ、ヨ
これは英語とは大きく違います。
Japan(ヤーパン)は最初にアクセントがあります。
jungをヤングと読まないようにしましょう。
ヤッケはドイツ語では上着ですが、日本ではスキーのときに着る防寒具です。
jungをヤングと読まないようにしましょう。
ヤッケはドイツ語では上着ですが、日本ではスキーのときに着る防寒具です。
pf:プフ
これは、プ・フと分けて読みません。一つの音のように発音します。
まず、フ(f)の音を出すときの口をします。つまり、下唇の内側に上の歯を軽く当てます。そしてプと発音します。唇を閉じて一気に破裂させる感じです。
誰かに唾をかけるつもりで発音するといいでしょう。
qu:クヴ
これはu(ウ)がv(ヴ)の音になります。クウェでは発音しにくいので自然にそうなるんだと思います。例外的な発音は、たいてい発音の手抜き(口抜き?)で起こります。
-r:語末では、ア
rは普通は、ラリルレロとローマ字読みします。rot(赤い)はロート、trinken(飲む)はトリンケンです。
でも、rが語末にある場合は、アと読みます。つまり、-erの場合と同じで、母音化します。アはアでも軽いアです。
s+母音:ザ、ズィ、ズ、ゼ、ゾ
sは母音が後に続くと、濁った音になります。
Hausって、なんて素直なつづりなんでしょう。houseが歪んでいると思いませんか?
sch:シュ
ss, ß:ス
Klasseの最後のeをきちんと読んでくださいね。
essenはシャウエッセン(Schauessen)のessenです。Schauは英語のshowですが、組み合わせの意味は不明です。
次は、ßの例です。
ssの場合は、その前にある母音は短母音になります。ssがあると短く読みます。
ßでは、その前にある母音は長母音か二重母音(heißenのei)です。
二重母音はのばさないのですが、まあ、おおざっぱに、ßなら前にある母音をのばすと覚えておきましょう。
sp-:語頭では、シュプ
語頭では、スプではなくシュプです。
Knospe(クノスペ:つぼみ)のように、語頭になければ、普通にスプです。
st-:語頭では、シュト
st-もsp-と同じで、語頭ではストではなく、シュトです。
Studentをスチュと読まないようにしましょう。また、シュトゥデントと、アクセントは後ろにあります。
Kunst(クンスト:芸術)のように、stが語頭になければ、普通にスト。
ts:ツ
dsと同じく、ツと発音します。
tsch:チュ
schはシュでしたが、これにtがついてtschとなると、かわいらしくチュ。
tschüsも、かわいらしく発音します。短くチュスと言うときもあります。そのときのつづりは、tschüssとなります。ssの前は短母音でしたね。
tz:ツ
ds, tsと同じく、tzもツです。
v:フ
これも英語と違い、ヴとは発音しません。濁らないフです。
w:ヴ
先ほどのVolkと組み合わせると、Volkswagen(フォルクスヴァーゲン)となります。sはVolkとWagenの二つの単語をつなげるために入っています。
z:ツ
「踊る」は、タンツェン。丹前(たんぜん)ではありません。(通じるか?)
確認と補足
いやあ、結構いっぱいあって大変でしたね。まあ、ざっと見ておき、忘れたらここに戻って確認すればいいです。そのために、アルファベット順にしているのですから。
最後に、ちょっと確認しておきます。もう疲れたなら、読まなくても結構です。暇なときに戻ってきましょう。
語末の-b, -d, -gは、プ、ト、ク
これらは、ブ、ド、グと有声音になるのではなく、プ、ト、クと無声音になるのでしたね。
ds, ts, tz:ツ
これらはみんな、ツでした。
rの発音
普通はラリルレロ
でも、語末に、-rや-erが来ると母音化され、アとかアーとかになるんでしたね。
それ以外でも母音化される傾向がしだいに強くなっています。
短母音+r:ル
rの後に母音が来ないとき、「短母音+r」だとルと発音します。
長母音 + r:ア
さらなる母音化も
しかし、母音化はさらに進んでいて、短母音の後ろにあるrもアと母音化される傾向が強くなっています。つまり、
のように発音するようになっているのです。ヴルストと強くrを発音するよりも、軽くアと発音する方が楽だからです。電子辞書のカタカナ表記とネイティブの実際の発音がしばしば違って聞こえるのはそのためです。いずれ、辞書でもヴァストとレァネンと表記されるようになるかもしれません。
初学者はどうしたらいいのか困ってしまうのですが、とりあえず、現在の辞書の原則に従っておきましょう。そちらの方が日本人にはとっつきやすいからです。
短母音の後でアと発音するのは、実際の発音に触れる機会が多くなって、こっちのほうがいいやって思ってからでも十分です。自然に修正していけばよいのです。というより、rの発音に限らず、どの発音も自然に修正されていくでしょう。
修正されなくても通じればかまいません。ドイツ語圏でも、人によって、また地域によって、発音は実にさまざまです。南ドイツやオーストリアやスイスでは、rはみんなルです。それもすさまじいルです。
まとめ
たくさんあって疲れましたね。何より大事なのは、実際のドイツ語の文をたくさん聞いて、後について発音することです。発音に疑問を抱いてから細かい発音の仕方を学んでもいいのです。
まず覚えておくことはただ一つ、だいたいローマ字読みすればよい、という原則だけです。