ドイツ語の動詞について学びます。英語と違って、ちょっとややこしいですよ。
不定詞
ドイツ語の動詞はほとんどが、<-en>で終わります。<-n>で終わる動詞もまれにありますが、今は無視しておきます。
- heißen(ハイセン) :~という名前である
- kommen(コメン) :来る
- wohnen(ヴォーネン):住む
heißen、 kommen、 wohnen――これが辞書に載っている形です。英語ではこれを動詞の「原形」と呼んでいますが、ドイツ語では「不定詞(不定形)」と呼びます。言語ごとに文法用語が違うのです。
不定詞は、語幹と語尾から成ります。
- heißen = heiß + en
- kommen = komm + en
- wohnen = wohn + en
<heiß->、<komm->、<wohn->が語幹で、<-en>が語尾です。こういう用語は次で使うので、覚えておきましょう。
定動詞
辞書では不定詞が見出し語となっていますが、動詞を実際の文で使うときには次のような形になります。<ich>を主語にした文を作ってみます。
- Ich heiße Yojiroo. (私はヨジローと言います。)
- Ich komme aus Japan. (私は日本から来ました。)
- Ich wohne in München.(私はミュンヒェンに住んでいます。)
ヨジローって変な名前ですね。まあ、それはともかく、二つ目の文の<aus>は「~から」という意味の前置詞です。また、三つ目の文の<München>は、「ミュンヘン」ではなく、「ミュンヒェン」と発音します。<ch>は「ヒ」と発音するのです。
上の三つの文を見ると、動詞がすべて<-e>で終わっています。語幹は変わりませんが、語尾が変わっています。
主語が<er>の場合はどうなるでしょうか。
- Er heißt Paul. (彼はパウルと言います。)
- Er kommt aus Deutschland. (彼はドイツから来ました。)
- Er wohnt in Fukuoka. (彼は福岡に住んでいます。)
Deutschland(ドイチュラント)はドイツです。Paulはポールではありませんよ。パウルです。
またまた動詞の形が変わりました。今度は語尾がすべて<-t>となっています。
このような、実際の文で使われている動詞の形を「定動詞(定形)」といいます。辞書では「不定」だったものが、実際の文では主語に応じて一つの形に「定」まります。それで「定動詞」なのです。
動詞の現在人称変化
英語とは違って、ドイツ語は主語に応じて動詞の形が変わります。これを動詞の人称変化といいます。現在形の場合の変化を現在人称変化といいます。ドイツ語では主語が<ich>と<er>の場合だけではなく、他の人称代名詞でも動詞の形が異なるのです。
kommenの例で見てみましょう。
すごいですね。<kommen>の語幹<komm->は変わらないのに、語尾が<-e>、<-st>、<-t>などと変化しています。
主語が複数の場合は、wir kommen(私たちは来る)、sie kommen(彼らは来る)のように、不定詞と同じ形のものがありますが、これも語幹<komm>に語尾<en>をつけたらたまたま不定詞と同じになったと理解しておきましょう。
これが規則的な動詞の現在人称変化であり、多くの動詞はこんなふうに変化します。
英語しか知らない人は茫然とするでしょうが、このややこしさこそがドイツ語の特徴なのです。「主語に応じて動詞の形が変わるんだ~、へ~、おもしろい!」と思ってください。
ほとんどの動詞がこんなふうに変化するのですから、この人称変化をまず覚えておかないとどうしようもありません。でも上の表を見ても覚えられそうにありません。そこでちょっと簡略化します。
ich komme (イッヒ コメ)
du kommst (ドゥ コムスト)
er kommt (エァ コムト)
wir kommen(ヴィア コメン)
ihr kommt (イーァ コムト)
sie kommen (ズィー コメン)
どうですか? だいぶ覚えやすくなったのではないでしょうか。
上の三つが主語が単数形の場合、下の三つが複数形の場合です。<er>(彼は)と<sie>(彼女は)と<es>(それは)はいつも同じ形になるので、<er>(彼は)で代表させてます。erで代表させてsieを使わないのは、<sie>は「彼女は」のほかにも、「彼らは/彼女らは/それらは」もあるし、また大文字で「あなたは/あなたがたは」などもあって混乱するからです。
「あなたは/あなたがたは」の<Sie>は、動詞の形はいつも「彼らは/彼女らは/それらは」の<sie>と同じなので、省略しています。
ということで、上の6つだけになります。「イッヒ コメ」「ドゥ コムスト」「エァ コムト」……とリズミカルにつぶやいて、動詞の規則的な現在人称変化を覚えてしまいましょう。きっとドイツ語を学んでいる気分になれます。いや、実際にドイツ語を学んでいるのです。